お世話になっております。
DTM速報管理人「ロケットえんぴつ3号」です。
今回は電池についての記事です。
電池の中でも、エフェクターやアクティブピックアップ等の
楽器に用いられている「9Vバッテリー」に着目します。
アクティブベースと電池私は、エレキベース「Ibanez SR505」を使用していますが、
これはアクティブベースであり本体にプリアンプを内蔵しています。
これにより、ベース本体でイコライザーが調整でき、音作りの幅が広がります。
また、ノイズに強いという利点もあります。
(一方、プリアンプを内蔵していないベースは、パッシブベースといいます。)
以下のように、ベース本体 + アンプシミュレータで過激な音作りが可能です。
ただし、アクティブベースの使用には、電池が必要であり、
その電池としては、一般的に以下のような「9Vバッテリー」が用いられます。

Duracell Procell PRO-9V 「9V形アルカリ乾電池」
アルカリ電池とマンガン電池9Vバッテリーには、マンガン電池とアルカリ電池があります。
以下に化学反応の観点から、それぞれの電池の違いを説明していきます。
マンガン電池
マンガン電池は、以下の材料で構成されています。
負極 :亜鉛(Zn) <円筒状の亜鉛缶>
正極・減極剤:二酸化マンガン(MnO2)
正極導電助剤:炭素(黒鉛)
電解液 :塩化亜鉛(ZnCl2)・塩化アンモニウム(NH4Cl)水溶液
そして、以下が放電時の反応式として知られています。
負極 : Zn → Zn2+ + 2e-
正極 : MnO2 + H2O + e- → MnO(OH) + OH-
正極 : MnO2 + H2O + e- → MnO(OH) + OH-
電子が外部回路を経由し、黒鉛に集められ、正極の二酸化マンガンが電子を受取り還元。
このとき、電子が外部回路を経由する際、電池から電気エネルギーが得られます。
また、負極が酸化され発生した亜鉛イオン(Zn2+)は、弱酸性である電解液(塩化亜鉛(ZnCl2))と反応し、4ZnCl2・4Zn(OH)2等を形成します。この反応は、負極表面の亜鉛イオンを取り除き、亜鉛が溶解し続けられるようにし、起電力の低下を抑制する役割を果たしています。一方で、これは不可逆反応であるため、充電(=電気エネルギーを与えて放電反応の逆反応をさせること)をしても、元の物質には戻りません。マンガン電池が充電できないのはこのためです。
そして、マンガン電池は、アルカリ電池と比較すると、内部抵抗が高いことが知られており、これは上記の反応速度が遅いからだと考えられます。反応速度が遅く内部抵抗が高いと、「 V = E - (I × R) 」(V:出力電圧、E:起電力、I:電流、R:内部抵抗)の式に従い、大電流で長時間使用(放電)した場合、出力電圧の低下が著しくなります。(元々の電池の能力である起電力Eから、電流Iと抵抗Rの積が引かれた値が出力電圧となる。) その結果、マンガン電池は、電圧降下が起こりやすく高出力には向かないという特徴があるのです。ただし、実際にアクティブベースやエフェクター等の機材に使用しているときは、電圧降下が起こると、音質・音量が低下していくため、全く音が出なくなる前に交換時期がわかるというメリットになり得ます。
ちなみに、マンガン電池を休ませると電圧が回復する理由は、反応速度が遅いことにより電極表面とバルク中のイオン濃度が不均一な状態のとき、放電を停止させることで、イオン拡散により濃度勾配が緩和され、電極表面の反応性が回復するためだと考えられます。
アルカリ電池 (アルカリマンガン電池)
↑外観は、アルカリ電池とマンガン電池に違いはほぼありません。
アルカリ電池は正式には「アルカリマンガン電池」と言い、以下の材料で構成されています。
負極 :亜鉛(Zn) <粉末>
負極集電体 :黄銅(Cu・Znの合金)
正極 :二酸化マンガン(MnO2)
電解液 :水酸化カリウム(KOH)水溶液 <負極に含浸>
電解液に強アルカリ性の水酸化カリウムを用いているため、
アルカリマンガン電池という名称が付けられました。
そして、以下が放電時の反応式として知られています。
負極 : Zn → Zn2+ + 2e-
正極 : MnO2 + H2O + e- → MnO(OH) + OH-
正極 : MnO2 + H2O + e- → MnO(OH) + OH-
負極の亜鉛が酸化されイオン化し、正極の二酸化マンガンが電子を受取り還元という基本的な反応は同一なのですが、負極の亜鉛が、マンガン電池は缶状であることに対して、アルカリマンガン電池は粉末状になっています。粉末状であることで、缶状よりも表面積が大きく反応速度を高めることができます。また、電解液に強アルカリ性である水酸化カリウム(KOH)を用いているのは、亜鉛を溶解させ続け、反応性・反応速度を高めるためです。(亜鉛は両性金属なので、アルカリ性環境下で錯イオン形成反応を生じる。) したがって、マンガン電池と比較し、内部抵抗が小さいため、アルカリマンガン電池の方が、電圧降下が小さく、高出力に向いていると言えます。
さらに、負極の表面積が大きいことにより、マンガン電池と比較して、体積あたりのエネルギー密度が高いという利点があります。要するに、同じ形状であれば、マンガン電池よりも、アルカリマンガン電池の方が高容量ということになります。(※一般的に5~10倍長寿命)
上記のマンガン電池からの改良(①電解液に強アルカリを採用、②構造設計の変更)により、アルカリマンガン電池は、マンガン電池よりも高出力・高容量となりました。一方、強アルカリ性の電解液を使用しているため、もし液漏れが発生した場合、危険であるというリスクを伴います。具体的には、直接触れた場合は皮膚への薬傷・目に入った場合は失明(アルカリ下におけるタンパク質の加水分解反応)、機器の樹脂部分・金属部分に触れていた場合は腐食反応等が懸念されます。
以下で上記に関連する電池の論文が無料で読めますので、是非ご覧下さい。
乾電池の種類の違いによる消耗経過の比較
http://jairo.nii.ac.jp/0029/00011034
まとめ【マンガン電池】
メリット
- 安価 (材料費等が安いため)
- 出力の低下がわかりやすく、電池の交換時期がわかる (電圧降下しやすいため)
- 高出力に向いていない (反応速度が遅く内部抵抗が高いから)
- 寿命が短い (負極のエネルギー密度が小さいから)
- 安定した出力が得られない (電圧降下しやすいため)
推奨用途
以下が参考になります。
「目的別 電池の機能比較一覧」
(http://panasonic.jp/battery/drycell/lineup/)
【アルカリ電池 (アルカリマンガン電池)】- 低出力機器・連続使用しない機器
→ アナログエフェクター
以下が参考になります。
「目的別 電池の機能比較一覧」
(http://panasonic.jp/battery/drycell/lineup/)
メリット
- 高出力・長時間連続使用に対応可能 (内部抵抗が小さいから)
- 寿命が長い (負極のエネルギー密度が高いから)
- 安定した出力が得られる (電圧降下しにくいため)
- マンガン電池と比較した場合は、価格が高い (材料費等が高いため)
- 出力低下がわかりにくく、突然容量を使い切り使用できなくなる (電圧降下しにくいため)
- 液漏れした場合危険 (強アルカリ性電解液を使用しているため)
- 高出力機器・連続使用する機器
→ アクティブピックアップ、デジタルエフェクター
アルカリ電池を安全に使用するためにアルカリ電池の液漏れの原因としては、以下が挙げられます。
【液漏れの推定原因】
- 電池の逆接続
→ 充電されてしまうことで、設計外のガス発生反応が生じ、内圧が上昇し膨張破裂 - 電池のショート(内部短絡・外部短絡)
→ 一度に大電流の放電反応が起こることで、異常発熱し、ガス発生・内圧上昇・破裂 - 異種電池・新旧電池の混在使用
→ 古い電池・電圧の低い電池が過放電を起こすことで、設計外のガス発生反応が生じ、
内圧が上昇し膨張破裂 - 機器のスイッチをオンしたまま放置
→ 電池が過放電を起こすことで、設計外のガス発生反応が生じ、
内圧が上昇し膨張破裂
【液漏れ対策】
- プラス端子とマイナス端子を逆に接続しない
- 電池に振動・衝撃を与えない
鍵やネックレス等、金属製の物と一緒に保管・運搬しない - 複数の電池を使用する場合は、同一メーカーの同一品の新品同士で組み合わせる
- 長期間使用しないときは、電池を取り外す
※参考ページ
[アルカリ・マンガン] 乾電池が液漏れを起こす原因は? PZ18155 - Panasonic
【【楽器用途】 アルカリ電池とマンガン電池の違い】の続きを読む